先日、慶應義塾大学商学部教授であり、社会保障のスペシャリストとして知られる権丈善一先生の勉強会に参加しました。テーマは「FPのための年金、民主主義、経済学」。盛りだくさんの内容で、とても2時間では語りつくせないお話でした(配布資料は120ページ以上、途中、問題を出されて答案まで書かされました…苦笑)
ごくごく簡単にまとめると
・公的年金論議が今に至る歴史的な経緯
・公的年金「保険」= 長生きリスクに対する「保険」。老齢給付だけを取り上げて、損得や世代間格差を語るのはおかしい
・「Output is central(生産物こそ重要)
⇒年金を設計するには①現在の生産物を蓄えるか、②将来の生産物に対する請求権を設定するという2つの方法しかない。①は現実的に無理で、将来の生産物への請求権の確保が大事
・平成16年年金改革のパラダイムシフト
⇒従来の給付水準を維持するには(厚生年金の保険料率は)22.8%必要だが、保険料率は18.3%で固定されたため、将来の給付水準は下がる。これを何とかするには「マクロ経済スライドのフル適用」「厚生年金の適用拡大」「繰り下げ受給の推奨」の3つが必要。
(*折しも4月4日から社会保障審議会年金部会での議論が始まりました⇒こちら 今後の議論をしっかりみていきましょう!)
・今後、公と民の協力をどうしたらよいか。
印象に残った言葉。
「民主主義には情報が必要。ただ、最近は(情報の)基礎知識の難易度が高くなっている。これは民主主義にとっては厳しい」
「教育が大事」
そして、(感情論ではなく)健全な議論が必要というのはその通りだと思います。
<ご参考>
権丈ゼミの4年生が作成した年金動画が秀逸です⇒こちら
権丈先生のご著書
・『ちょと気になる社会保障 増補版』
この本についてはFPの伊藤俊輔さんがブログで紹介しています
”ちょっと気になる社会保障 増補版”読みました(【京極・出町/京都】年金アドバイザーの毎日)
*公的年金の議論については各論にいきがちですが、社会保障の役割、公的年金とは、といったそもそも論を押さえておくことが大切だと改めて感じました。今回はFP向けの勉強会でしたが、今後は公的年金や退職一時金、企業年金、iDeCo(個人型確定拠出年金)等をどう受け取ればよいか、といった相談はふえるでしょう。ただ、これに対する解は意外に難しく、公的年金や勤務先の退職給付制度、iDeCo(個人型確定拠出年金)といった制度に加えて、税金や社会保険に対する横断的な知識が必要です。ご本人のライフデザインなども考慮する必要があるでしょう。「全体最適」がキーワードですね。