2018年から始まる積立NISA(少額投資非課税制度)で投資対象となる投資信託の概要が決まりました。
<ご参考>
■積立NISAの対象となる投資信託の基準について(その1・インデックス投信)
■積立NISAの対象となる投資信託の基準について(その2・アクティブ投信)
現行の条件で絞り込むと、対象となる投信は約50本。公募株式投信5406本の1%以下と、入口で商品を相当絞り込む方向です。インデックス投信も告示で指定された指数に連動する商品に限定されますし、アクティブ投信は数本しか残りません。この結果を受けて、今の考えをまとめました。
■資産全体で適切なポートフォリオ構築できる環境を整える
-金融庁はNISA、厚生省はiDeCoと単体で考えていますが、初心者であっても、税効果の大きい口座であるiDeCoや企業型DCの口座をベースに、付加的にNISAで運用する人も多いと考えられます。資産形成において、金融資産全体で最適なポートフォリオを構築することが大切です。
-積立NISAは株式または株式を含む資産複合型(バランス型)に限定されていますが、ほかのアセットクラスを含め、ポートフォリオを組める環境を整えることが必要です。背景には投信の最低積立額が引き下げられ(1商品の最低積立金額は500円・1000円など)、少額の積立でも複数の投信の組み合わせが容易になったことがあります。
-DCについては現在、社会保障審議会企業年金部会「確定拠出年金の運用に関する専門委員会」で運用商品提供本数の上限や、指定運用方法の基準などについて議論されています。企業型DCの対象商品はインデックス投信中心になる可能性もあり、積立NISAは豊富な選択肢を提供することが投資家の利便性向上につながるはずです。
■将来的には要件の緩和も視野に
-商品選定において、もっとも重視されるべきは個人投資家の利益であり、多様な選択肢を望む投資家を排除しないことが大切です。20年という非課税期間を考えれば、「今」初心者であっても経験を積んでいく投資家もいるはずです。
-積立NISAは個人投資家の長期的な資産形成に資する制度であることを踏まえれば、長期的な観点から運用を行う投資信託が対象となります。これから成長し経済発展に貢献する企業を発掘し、それらに資金を投下していくことはインデックスファンドにはできません。アクティブファンドが玉石混交であり、多くがコスト面で割高であることは確かですが、インデックスファンドに加えて、業界がよいアクティブファンドを作り上げていくことは両輪の関係にあります。「個人投資家がよい投信を選択できる環境づくり」を整える上でもまた必要だと考えます。
-現行の手数料基準では厳選投資や中小型株に投資を行う投信など特徴のある投信は対象外となります。アクティブ投信については運用管理費用(信託報酬)上限を一律に適用することはそぐわないですし、もっと丁寧な議論が必要です(運用中に間接的に支払われるコストはすべて運用成績に帰すので、リスク・リターン等を含めた運用実績をみることで個々に判断することが必要)。
以上を踏まえて、最終的には①から⑤くらいの緩めの基準にして入口はある程度幅を持たせてもよいのではないでしょうか。
①信託期間が無期限または20年以上のもの
②決算が年1回または2回のもの
③一定の場合を除いて、デリバティブ取引への投資による運用を行わないもの
④3年以上の運用実績があるもの(ただし、インデックス投信はマザーファンドの運用期間が3年以上あれば可とする)
④公募で買えるもの(DC・ラップ専用を除く)
⑤ノーロードで積み立てできるもの
(①~④までの条件で、2017年1月末時点で約880本弱が残ります。⑤商品の販売条件でノーロードであることを条件に加えると170本弱になります。実際には購入時手数料は自由化しているので、販売会社によっては一部ノーロードで買えるものもあるため、本数はそれより多くなります)
その上で、フィデューシャリー・デューティ(FD)の理念に沿って
・運用会社は自社が運用する積立NISAに適していると考える商品の届出を行い、
・販売金融機関は「商品選定プロセス」を明確にした上で積立NISAの対象商品を選ぶ
ことがのぞましいと考えます。また、
・投信評価会社もより個人が投信選択しやすいような情報提供を心がける
・投資信託協会も(個人も含めて)そのためのデータ提供を積極的に行う
ことも必要でしょう。そして、
・個人投資家も自立して、最終的には「自分で判断」する
ことが大切です。
今回対象商品がノーロードの投信に限定されたことで、販売において回転売買を行う合理性がなくなります。NISA口座で運用をする際、中長期では必要となると思われる口座内での預け替えを可能にする議論の土壌もできたのではないでしょうか。せっかく非課税期間20年の制度ができたわけですから、これで終わりではなく、いい制度に育つように、商品や利便性などについて、横断的に、オープンな議論が行われることを期待したいです。
<ご参考>先日、金融庁がブロガーさん向けに行った積立NISAの説明会についてm@さんが詳しくまとめています。
■よくわかる積立NISA 積立NISA説明会at金融庁 参加レポート(1)制度説明編 - "いい投資"探検日誌 from 新所沢
■よくわかる積立NISA 積立NISA説明会at金融庁 参加レポート(2)質疑応答編 - "いい投資"探検日誌 from 新所沢
<ご参考>ワーキングの委員でもあった、QUICK資産運用研究所・北澤千秋さんの記事
積立NISA 金融庁がアクティブ型にダメ出しの理由